写実からアンフォルメルへ   象徴主義の時代   天景の時代  
        
 前島隆宇は学生時代、類い稀な写実に徹した。既に3年生頃からそれまで写実を極めた前島は、次第に抽象への目標に転じ、卒業前から後にかけ長きに亙って、独自の表現領域を求め、苦悩の研鑽時代を過ごした。20代、30代は従って混沌とした変遷の時代といえる。つまり長い間「時間を超えて在る人間像」に迫っていったが、その姿はやがて消え去り、不定形、非形象となって、「生命」の息遣いだけが残る、絵画の原点にまで到達。これが、アンフォルメルの時代と言える。
 20代後半、第1回個展発表で、米詩人リチャード・V・ステッガー氏に依り毎日英字新聞に写真入で好評を得たのは、幸いであった。氏はこの評の中で、前島の他方向への可能性を示唆している。
 30代後半、未だ自由渡航の許されない当時、西ドイツ渡航、滞在のチャンスに恵まれ、キール大学民族博物館にて、フラオ・プロフェッサー・ドクター・・シュロッサーの元、アシスタントとして日本展等に貢献、その間ヨーロッパ周遊、研鑽を極める。
 帰国後、京王百貨店梅田画廊企画、個展でデビューの機会を得、西ドイツ印象記展を発表。これが象徴絵画の発現、暗示的な幻想、幻影として「虚と実の境界領域」へと視点が注がれ、次第に確立されて行った。 その代表作が「バロンSの椅子」とそのシリーズである。




   
 「人間」を究めていくうちに細胞に至り、その在り方と宇宙の秩序が等質、等価である事に考えが至り、「天景」という主題で内部宇宙、心の宇宙を表徴するようになり、前島隆宇の自然観は大きく定まって来た。
 この巨大なテーマは既に10数年になるが、更に死を超えても究めていきたいものである。



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